大人になっておたふく風邪になったら男性不妊になるって話は本当でしょうか?
おたふく風邪で精巣が・・・
おたふく風邪は別名「流行性耳下腺炎」と言って、ムンプスウィルスによる感染症です。患者の呼吸器の飛沫を吸い込んだり、患者の唾液で汚染されたものと接触することで、体内にムンプスウィルスが侵入することで感染が成立します。
どんな症状?
2-3週間の潜伏期間を経て、最初は筋肉痛、食欲不振、頭痛、悪寒、微熱などの症状がでます。これらの症状が12-24時間続いてから、39.5度から40度に達する高熱がみられ、耳下腺の腫れは2日目にピークを迎えます。
難聴や髄膜炎、髄膜脳炎なども起こることがあります。そして、思春期以降の男性がおたふく風邪にかかると、約15〜35%の割合でムンプス精巣炎(睾丸炎)を発症します。
精巣炎とは精巣が赤く大きく腫れあがり、激しい痛みを伴います。
男性不妊との関連は?
さて、本題の男性不妊との関連ですが、精巣炎は男性不妊の原因となるのでしょうか?この質問に対する十分な医学的根拠のある報告はありませんが、
- 以下のような報告があります。ムンプス精巣炎にかかった人の、30-50%で精巣炎がおきた側の精巣の萎縮を認めた。
- 精液所見に関しては、298例のムンプス精巣炎の患者を、症状が軽快してから3年間追跡した結果、成人のムンプス精巣炎で24%、思春期のムンプス精巣炎で38%に、精液所見の異常が認められ、精巣炎が重症であるほど精液所見がより悪化した。
実際の男性不妊外来ではどうでしょうか?
我々の施設での症例をみてみます。
もともと子供がいて、成人になってから両側のムンプス精巣炎に罹った方が5人いらっしゃいまいした。症状が軽快してからも定期的に診察しましたが、5人とも精巣萎縮は起こっていませんでした。精液検査の結果、1人を除いて4人では、精液量・精子濃度・精子運動率・正常形態精子率の全てが、基準範囲内に回復していました。
回復しなかった1例は、精巣上体炎を併発していたため、精子の通り道(精路)の通過障害があったと考えられます。
まとめ
つまり、精巣萎縮が起こる程の血流障害に陥ってしまうようなひどい精巣炎の発症を防ぐことが出来て(局所の冷却)、精巣上体炎の合併を防ぐことが出来れば(抗生剤)、ムンプス精巣炎による造精機能障害は回復するのではないか思われます。