勃起障害だけでなく、うまく射精ができないという問題が原因で不妊症になることがあります。
図は2013年に獨協医科大学越谷病院を訪れた射精障害の患者さんの数です。半分以上が重度の遅漏(膣内射精障害)であることがわかります。
1 ) 腟内射精障害
男性不妊治療の現場で多く認められるのは射精障害、それも重度の遅漏(膣内射精障害)です。膣内射精障害患者は、陰茎の腟への挿入が可能であるために未婚の時点で受診する場合は多くありません。
しかし、子供を作るという目的ができた時点で射精ができないということが問題となり、切羽詰まって専門機関に受診することが多いです。また、精液検査にて良好の結果であったとしても、フーナーテストにて性交後の子宮頸管粘液内に精子が認められない場合は、射精障害の可能性があることを留意する必要があります。
膣内射精障害患者に対して治療に長時間を要する場合、パートナーの年齢を考慮して、シリンジ法/スポイト法(マスターべーションにて採取された精液を、シリンジもしくはスポイトを用いて腟内へ注入する方法)が必要となる場合があります。
また、人工授精の適応となることが多いです。
2 ) 早漏
不妊症の治療にて早漏が問題となることはほとんどありませんが、抗うつ薬等の脳内セロトニンの取り込みを阻害する薬剤が有効です。
3 ) 逆行性射精
糖尿病が原因となり、精液が前に飛ばないで膀胱の中に出てしまう状態のことを逆行性射精と言います。
アモキサピンという薬剤が有効である場合があります。また、糖尿病のコントロールが重要です。
4 ) 神経性射精障害
脊髄損傷の事故後や、がんの手術の骨盤内リンパ節郭清などにより、射精の神経がダメージを受けて射精ができなくなることがあります。
神経のダメージを修復することは困難であり、挙児を希望される場合には精巣から直接精子を採取する手術を行います。
しかし、受傷後半年以上経過すると精子が作られる機能が低下するので、注意が必要です。