非閉塞性無精子症の原因は先天的なものが多いと言えます.先天的な原因としましては,遺伝子の異常や遺伝情報を含む染色体の異常が挙げられます.
染色体の中でも性を決める染色体は性染色体と呼ばれ,通常,女性の場合はX染色体を2つ,男性の場合はX染色体とY染色体を1つずつ持っています.しかし,男性の中には複数(2つ以上)のX染色体と1つのY染色体を持つ人がいます.
このような染色体の異常はクラインフェルター症候群と呼ばれ,非閉塞性無精子症の原因となります.
過去の当院の調査では,クラインフェルター症候群は非閉塞性無精子症の約5人に1人にみられました.
後天的な原因で非閉塞性無精子症となることもあります.代表的なものは,抗がん剤治療や放射線治療です.
どちらも癌の治療ですが,がんだけでなく細胞分裂が盛んな正常の細胞も傷害を受けてしまいますので,精子産生にかかわる幹細胞がやられてしまうと精子を産生できなくなるわけです.
抗がん剤や放射線照射の種類あるいは量によって非閉塞性無精子症をきたすリスクが異なります.リスクの高い治療を受ける場合には、思春期以降の男性では精子の凍結保存が推奨されます.
このように非閉塞性無精子症の原因は多岐にわたりますが,
実は原因がはっきりしない「特発性」が最も多いのです.