今回は、後編です。
下のリンクからは全編読むことができます。
非閉塞性無精子症患者の中でAZFaもしくはbの欠失の割合はとても少ない(0.1~1%前後)ですが、AZFcの欠失は5~10%ほど報告されており、現在では非閉塞性無精子症患者さんや高度乏精子症患者さんにはAZF遺伝子の検査が推奨されています。
日本では、以前はアメリカに血液を郵送して検査していましたが、数年前から国内でも検査ができるようになりました。手術の前に精子が採取できるかどうか、を診断できる可能性があるため、無精子症患者さんにとっては非常に重要な検査となっています。
また、重要なこととしてAZFc欠失の患者さんの半数前後は手術で精子が取れるので、体外受精や顕微授精で子供を作ることができる可能性があります。
でも、そのお子さんが男性だったら、父親のY染色体が受け継がれるので、不妊症になってしまうのです。そのことを十分理解していただくために、遺伝カウンセリングが欠かせません。
AZFの微小欠失の話は、不妊症を扱う医者の間では当たり前になってきたのですが、2015年の米国生殖医学会の報告では、それ以外の男性不妊を引き起こす遺伝子が常染色体やX染色体上に多数見つかっていることがわかりました。それは、ここ数年で大きな変化です。無精子症や、精子が得られても、受精できなかった原因が様々な遺伝子で説明できてしまいます。
あと少ししたら、これらの遺伝子を一気に調べることができる検査が登場するのでしょう。そして、治療していくようなこともできるのかもしれません。
男性不妊症の診断は今後大きく変わっていくと思われます。