私たちは,精子濃度が500万/ml以下の状態を「高度乏精子症」と呼んでおります.
精液検査の基準値を下回るからといって生殖能がないわけではないということは先日お話しましたが,高度乏精子症の状態で自然妊娠を目指すことは、確率的にかなり難しくなると考えられるため,多くの場合で顕微授精の適応になるのではないかと思われます.
(また別頁で説明しますが,顕微授精とは体外に取り出した卵子に,顕微鏡下で精子を1つ注入して受精卵を作り,子宮に戻す方法です.)
もちろん,薬物療法によって精子濃度が改善する方も稀にいらっしゃいます.また,精索静脈瘤が原因と考えられる場合,根治手術によって劇的に精液検査結果が改善し,自然妊娠を達成される方も中にはいらっしゃいます.
しかしながら,精索静脈瘤手術を行った全ての人が改善するわけではありませんし,薬物療法にしてもみんながみんな改善するというわけではありません.
即座に顕微授精へ向かうのか,まずは男性側の治療をするかについては,各カップルの年齢や希望などの背景に応じて相談しながら決定していきます.